35歳じゃボケェェェッ!

「紅桜、まずは美味い水をくれ!」
「申し訳ありません。私は通信越しのため、水をお出しする事は出来ません」

「この風、この肌触りこそ戦争よ!」
「?」

「自分の力で勝ったのではないぞ! そのモビルスーツの性能のおかげだという事を忘れるな……!!」
「……マイスター、どうされたのですか?」

「…………」

「誕生日で35歳になったから、同い年のランバ・ラルを気取ってみたけど、意図を理解してもらえず途方に暮れてますね」

「ツバキさ~ん!」

「はいはい、ツバキさんですよ」

「見習え、紅桜! これが看板娘の仕事やぞ!」

(否定したいけど出来ない……)
「理解しました――ランバ・ラルか」

「遅い! そんなんじゃソロモンに1番乗り出来ないわよ」
「カイ・シデンか」

「正解! やれば出来るじゃん、べ~におちゃ~ん!」
「キモいです、このブタ野郎。底辺でクズのダメ人間が。死ねばいいのに」

「…………生まれてきてごめんなさい。生きててごめんなさい。死にます」
「? ツバキ、マイスターがへこんでいますが、私は何か間違えたのでしょうか」

「誕生日にその罵倒は、さすがに堪えたんじゃないですか?」
「ご褒美と、そうでないタイミングがあるのですね。難しいです」

「ツバぴょんさ~ん。膝枕で、よしよしして、慰めて~」

「しっかりしてください。ランバ・ラルがそんな事を要求しますか?」

「実はハモンと2人きりの時は、してもらってたかもしんないじゃん。赤ちゃんプレイに興じてたかもしんないじゃん」

「嫌な想像をしてしまいました……」

「だいたい、あんな35歳、おかしいじゃない。どんな人生を送れば、あんな風にヒゲが似合って、部下達に慕われて、内縁の妻までいるカッコイイおじさんになれるのよ」
「『ガンダム』は架空の物語です」

「…………」

「紅桜、それを言ってはお終いです」
「難しいです」

「ちなみに、野原ひろしと両津勘吉も35歳だそうですよ」
「『ガンダム』シリーズだと他に、ギレン・ザビ、シーマ・ガラハウ、ストライカー・イーグル、アリーアル・サーシェスがマイスターと同い年です」

「ストライカー・イーグルって、伝わりますかね……」

「『Vガンダム』で藤原啓治さんが演じたキャラよ! あと、『08小隊』のエレドア・マシスと、『ガンダムW』のノベンタ元帥も忘れないで……!」

「その2人は藤原啓治ボイスというだけで、35歳じゃありませんけどね」

「……なんで、こんな話してるんだっけ?」

「貴方が35歳の誕生日だからって、ランバ・ラルごっこを始めたからですよ」

「おかしい……あたしが思ってた35歳って、こうじゃない」

「どうなる予定だったんですか?」

「明確なビジョンはなかったけど、こんなんじゃない。こんなんとか言うな」
「自分で言うとるやないかーい」

「……あ、うん、そうだね」
「ツバキ、私はまた間違えたのでしょうか」

「間違ってはいませんが、キャラの方向性でしょうか」
「難しいです」

「まあいいや。あたしなりの35歳になればいいよね。そう、誰とも似てない、あたしだけの35歳に! あたしらしい35歳に……!」
「……なんでしょう。マイスターのドヤ顔を見ていると、ひどく形容しがたい感情が溢れてきます」

「それはきっと“イラッとする”だと思います」

「仕切り直して参りましょう――いつもマイスターの小説にご感想をくださる城元太さんが、イラストを描いてくださいました。『ゾイやみ』の、やみ子さんと私ですね」
「マイスターが誕生日にイラストを送っているので、そのお返しに描いてくださったそうです。手描きしたものを、デジカメで撮影して送ってくださいました」

「嬉しいですね。優しい雰囲気が素敵です」

「ありがたいわ。なんか、こういうのをもらうと、こみ上げてくるものがあるというか……ありがたい」
「マイスターのしょうもないコメントでイラッとした心が浄化されるようです」

「しょうもない……」

「城元太さん、素敵なイラストをありがとうございました。どうしようもないダメ人間ですが、今後もマイスターと仲良くしてあげてください」

「どうしようもない……」
「こんな35歳はダメ、絶対」
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